トーキョーナガレモノ

日本映画の旧作の感想。でもそのうち余計なことを書き出すだろう。

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ドラマ

乾いた花

元ヤクザの親分で俳優の安藤昇のインタビュー「映画俳優安藤昇」(ワイズ出版)を読んでいたら、こんな発言があった。 大体、博打というのはスリルがあるから面白い。金は命から二番目に大切なものだろう。にもかかわらず、それをオモチャにするのだから、これ…

遊び

少女には名前がない。少年には名前がない。 雑貨屋の店先の赤電話で電話帳をめくっていた少女(関根恵子)に、少年(大門正明)が背後から声をかける。 「誰にかけるんだい?俺が探してやるよ」 少女は貧しい女工からキャバレーのホステスに鞍替えして見違えるほ…

盲獣

「あなたは、何者なの!?」 「ぼくは、彫刻のまねごとをしている男です」 「彫刻!?」 「ぼくはめくらです。それも生まれ突き目の神経がダメで、何も見えないめくらなんです。めくらって、あわれなものだ。この世の中には目を楽しませるものがいっぱいある…

妻は告白する

——以上で本件の審理を終わるが、最後に被告人は何か言うことがありますか。もし自由の身になったら、どうするかね。 ——今度こそ、幸福な結婚をしたいと思います。殺人罪の被告として、こんな辱めに遭うのも、今までの結婚が不幸だったからです。 * 彩子(若尾…

青空娘

溌剌としたポニーテールの若尾文子がとても可愛らしい「青空娘」(増村保造監督・1957年大映)は増村-若尾コンビの第1作。ストーリーは小公女ふうの明るい青春ものである。 * 地方の高校を卒業し、有子(若尾文子)は東京で会社を経営している父・小野栄一(新欣…

女の一生(1962)

日露の戦場・旅順の陥落を祝う提灯行列が歩く中、通りの裏のボロ家で折檻されている少女、おけい(京マチ子)がいた。母を幼くして失い、父も日清戦争でなくしたおけいは折檻の末に叔父夫婦の家を追い出され、あてどもなく彷徨ううちに、誕生会を祝う歌声に誘…

美貌に罪あり

杉村春子、山本富士子、若尾文子、野添ひとみ、勝新太郎、川崎敬三、川口浩、藤巻潤。 「美貌に罪あり」(増村保造監督・1959年大映)は没落した地主農家から自立してゆく家族の様々な生き方をオールスターで描く作品。お盆休み向けの目玉作品なので、大事なの…

幻の馬

馬を一頭しか飼っていない北国の貧しい牧場で、その子馬は夜明けと共に生まれた。 子馬に「タケル」と名づけた牧場の少年、次郎(岩垂幸彦)はタケルをこの上なくかわいがり、ハーモニカを吹いて歌を歌ってやる。タケルが腸の捻れで病んだときは寝ずに一晩中看…

蟹工船

2008年に「蟹工船ブーム」というものがあった。この年はプロレタリアート作家・小林多喜二が獄中死してから75年の節目に当たり、小林を巡るシンポジウムや感想文コンクールが開かれたのだが、格差社会の中、明るい将来像を描けない若年層の仕事を巡る漠然と…

現代っ子

居間の鴨居に、額に入れた三枚の表彰状が掲げてある。 「行ってきまーす!」長男のやすし(鈴木やすし)が飛び出すと、真ん中の表彰状がずり落ちてしまう。表彰状を直して、やすしは学校に向かう。 「行ってきまーす!」長女のチコ(中山千夏)が次に飛び出すと…

デルス・ウザーラ

1902年夏、数名の部下を率いて沿海州を踏査していたロシア帝国の探検家アルセーニエフ(ユーリー・サローミン)は、森の中でアジア系の年老いた猟師デルス・ウザーラ(マキシム・ムンズク)と出会う。 年齢は「わからない」という。ずっと昔に家族を疫病で失って…