トーキョーナガレモノ

日本映画の旧作の感想。でもそのうち余計なことを書き出すだろう。

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東映

誇り高き挑戦

昔のことを蒸し返す奴はけむたがれるのが普通だ。 しかし深作欣二のいくつかの作品では、昔のことは忘れたという奴が悪役に回る。「仁義なき戦い」(1973)の終盤、広能昌三(菅原文太)が狡猾な親分山守義男(金子信雄)に絶縁を言い渡す場面。広能は山守の腰巾着…

人斬り与太 狂犬三兄弟

ラーメンにのせるチャーシューは一、二枚の方がいい。 そのほうが丼の小さな世界におけるチャーシューの希少価値を高めるし、どのタイミングで食べるかっていう作戦を立てるのも、じっくり味わうのも楽しい。一杯のラーメンにおけるチャーシューの存在意義は…

まむしの兄弟 恐喝三億円

「兄貴、3億の半分言うたらなんぼや?」「アホウ、そないなこともわからんのけ。1500万やがな」 神戸・新開地の「一度食いついたら死んでも離さない」まむしことゴロ政(菅原文太)と勝(川地民夫)のチンピラコンビが暴れ回る「まむしの兄弟」シリーズの6作目「…

若さま侍捕物帳 黒い椿

娯楽映画にはある種のルールがあり、そのルールは観客から作品への「期待」と、作品から観客への「サービス」(それがたとえ社会規範や倫理に反するものであっても)からなる。作品が観客との間に交わしたこの約束を忠実に履行することが、先品の成功を左右…

ゴルゴ13

片付けをしていたら、昔録画した「ゴルゴ13」(佐藤純彌監督・1973年東映)のDVDが出てきた。引っ越しの時に捨てたものだとばかり思っていた。 原作者のさいとう・たかをは、主人公デューク・トウゴウを高倉健をイメージしながら作ったと聞いているが、高倉…

あゝ決戦航空隊

12月14日の衆議院選挙の投票日を前に、維新の党の橋下徹共同代表が早くも白旗をあげたとも取れる演説をしたらしい。ブロガーのやまもといちろうは「大将は間違っても部下の背中を撃つような話をするべきじゃないと思う」とぼやいている。 橋下徹さんの「維新…

ジーンズブルース 明日なき無頼派

猟銃を構えた梶芽衣子の額のど真ん中に、小さな穴があく。 その穴から一筋の血がすーっと流れる。 彼女が目を見ひらいたまま崩れ落ち、バストショットのフレームの下に消えていくまでがスローモーションで捕らえる。 梶芽衣子が警察の狙撃隊に撃たれ絶命する…

実録・私設銀座警察

昭和23年11月某日、一人の殺し屋が死んだ。同じ日、マスコミに"銀座警察"と呼ばれた暴力団が公安の一斉検挙で壊滅した。 「実録・私設銀座警察」(佐藤純彌監督・1973年東映)は終戦直後の混沌の中にのし上がったならず者たちと、彼らに飼われたヒロポン中毒の…

北陸代理戦争

石川県の指定無形文化財に、能登半島のほぼ先端、輪島市名舟町に伝わる御陣乗太鼓という荒々しい伝統芸能がある。戦国時代、名舟に攻め寄せつつあった上杉謙信の軍勢を、木の皮と海藻でこしらえた異形の仮面とおどろおどろしい太鼓の音で脅かし、戦わずして…

激突!合気道

時代は大正の初め。和歌山の旧家に生まれ厳格な父に起倒流柔術を仕込まれた植芝盛平(千葉治郎)は弟子を率いて北海道開拓に赴く。 ある日植芝は北海組の飯場から脱走してきた少年をかくまったことがきっかけで一悶着になるが、北海組の雇われ用心棒で名取流空…

喜劇 特出しヒモ天国 (その2)

(承前) ター坊(下條アトム)は、A級京都に出前を届ける聾唖者の青年であった。まだ少年の面影を残すター坊には、しかし、やはり聾唖者の妻かおる(森崎由紀)がいた。 ある日ター坊はかおると共にA級京都で働かせて欲しいと昭平(山城新伍)に頼み込む。やむなく…

喜劇 特出しヒモ天国 (その1)

一が顔で二が持ち物(イチモツ)、三、四がなくて五が親切ーー。 これがストリッパー(業界用語で「タレント」)のヒモ(業界用語で「マネージャー」)稼業で生きていくコツだと、主人公・昭平は(山城新伍)はヒモ仲間から教えられる。女に寄生するヒモには、ルック…

CM入れすぎ「午後ロード」は本編をどれくらいカットするか

テレビ東京で平日の午後1時半から放送している2時間枠の「午後のロードショー」、通称「午後ロード」または「午後ロー」。 仕事があるので普段は見られないし、録画してまで見たいと思うようなラインナップでもない上に、下に書くような理由で積極的に観る気…

税金の無駄遣いじゃの

選挙が告示される数日前から、自宅から駅に向かう途中の道ばたに候補者ポスターの掲示板が立つ。高さ1.5メートル、幅3メートルくらいだろうか。白塗りの板に、各候補者のポスターの貼付場所を示す緑のマスが引いてある。告示されてから投票日までの間に、掲…

「左翼にあらずんば映画人にあらず」発言の背景

東京に住んでいるのでよく知らないが、自治体主催で長年開催されていた京都映画祭が、吉本興業のバックアップで「京都国際映画祭」と名を改めて2014年に開催されるそうだ。その準備委員会での俳優・津川雅彦のスピーチが話題になっていることを下記のブログ…

女囚さそり けもの部屋

「女囚さそり けもの部屋」(伊藤俊也監督・1973年東映)は「さそり」の異名をもつ凄腕の殺人犯・松島ナミ(梶芽衣子)の逃亡劇を描くシリーズの3作目。「女囚さそり 第41雑居房」で脱走に成功したナミは警察に追われる身に。猟犬の如くナミを追う隻腕の刑事・権…

女囚さそり 第41雑居房

「女囚さそり 第41雑居房」(伊藤俊也監督・1972年東映)は「女囚701号 さそり」のヒットを受けて作られたシリーズ第二作。 「女囚さそり」4部作は女優梶芽衣子のイメージを決定づけたシリーズでもあり、同年に結婚引退した「緋牡丹お竜」こと藤純子に代わる新…

大阪ど根性物語 どえらい奴

きのう、なぜ日本の起業家の生涯は映画にならないのかというエントリを書いた後で思い出したことがあった。 起業家の映画がポピュラーにならないのは、おそらく、事業を興して財をなす人が尊敬の対象にならない風土があるからだが、例外もある。浪速の商人(…