トーキョーナガレモノ

日本映画の旧作の感想。でもそのうち余計なことを書き出すだろう。

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白木万理

録画したまま放ってあった「必殺! THE HISSATSU」(貞永方久監督・1984年松竹)と「赤い夕陽の渡り鳥」(斎藤武市監督・1960年日活)を続けて見る。

 

前者はテレビ朝日系列の人気時代劇の映画化、後者は日活アクション全盛期の和製西部劇で、内容もスタッフも全く接点がなく、録り溜めのなかから適当に選んだだけだったが、見ていると一人だけ両作品に共通する出演者がいることに気がついた。それが白木万理*1という女優だ。

 

ああ、そういえばそうだった、と思う。

 

 金で復讐を請け負う裏の顔を持つ江戸南町奉行所同心・中村主水(藤田まこと)の妻りつと、なぜかガン捌きが上手い流れ者の歌手・滝伸次(小林旭)が流れ着く町々でキャバレーの踊り子やマダムをやっていた女優は同じ人だったのだ、と。

 

正確には「赤い夕陽の渡り鳥」で白木万理演じるマキは、東京でストリッパーをしていたが、父の死を機に福島に帰郷し、父に代わって牧場主の浅丘ルリ子を支える強い女、という役どころ。だがその暗い過去を知る悪い奴らにつけ狙われて窮地に陥る。

 

渡り鳥シリーズでの白木万理は、宍戸錠とともに準レギュラーの存在だが、この人の役は上述のように大概「盛り場の女」だ。浅丘ルリ子のような上品な華がない代わりに、キム・ノヴァクのようにつり上がった眉が気の強さを印象づける。悪い奴らの経営する店に雇われているが、一味になったわけではないので、時にはヒーローに情報を流したり助けを求めたりと、善と悪の境界線に立つことが多い。そういう意味では物語に欠かせない脇役だが、シリーズの中で白木万理の見せ場が最も多いのが本作「赤い夕陽の〜」ではないかと思う。

 

渡り鳥シリーズから約20年後の必殺シリーズについては多くを書く必要はないだろう。映画版「必殺!」の時点でテレビ版の放送が600回に達していたそうだから、白木万理にとっても代表作であることは確かだ。この作品は大抵、中村主水が壮絶な裏の「仕事(=殺し)」を終えた後、妻と義母に頭の上がらない冴えない中年男という「表」の顔に戻る場面でコミカルに締めくくられるのがお決まりのパターンだが、そのスタイルの確立には白木万理-菅井きんのコンビの息の合った巧さに因るところが大きい。

*1:「必殺!」では「白木マリ」でクレジットされているが、ここでは「白木万理」の名前で統一する