トーキョーナガレモノ

日本映画の旧作の感想。でもそのうち余計なことを書き出すだろう。

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Let It Goの意味の広さ

トピック「レリゴー」

ディズニーのアニメーション映画「アナと雪の女王」が大ヒットして、挿入歌「Let It Go」がYouTubeで大流行しているそうだ。映画は見ていないが、同曲の動画はYouTube英語版、日本語版ともに見させてもらった。どちらも自己肯定感に溢れる素晴らしい曲だった。正直鳥肌モノである。

 

Let It Go を日本語の「ありのままで」と訳したセンスには脱帽する。直訳すると「解放せよ」=「(本来の自分を)解き放とう」=「ありのままの自分を認めよう」=「ありのままでいい」くらいの訳し方を辿ったんだろうと思う。Goに代表される英語の基本動詞は意味の幅がきわめて広く、また指示代名詞の取り方次第で日本語への訳し方は文脈に応じた工夫がいる。

 

Let It Go というフレーズが多用される、あまり有名でない曲に、50年代から60年代にかけて活躍したアメリカのR&Bシンガー、”スクリーミン”ジェイ・ホーキンス ("Screamin'" Jay Hawkins)の"Constipation Blues"というのがある。ホーキンズは数年前に「Frenzy」のイントロが缶コーヒーのCMに使われたので、多少は聞き覚えがあるかも知れない。ジム・ジャームッシュの映画にも顔を出したことがある。


Screamin' Jay Hawkins - Constipation Blues (1969 ...

 

歌の始めにちょっとしたMCが入る。

Ladies and gentlemen, most people record songs about love,
heartbreak, loneliness, being broke... Nobody's actually went out and
recorded a song about real pain. The band and I have just returned
from the General Hospital where we caught a man in the right position.
We name this song: "Constipation blues".

(Read more: http://artists.letssingit.com/screamin-jay-hawkins-lyrics-constipation-blues-wfq41g9#ixzz33UoFPZvq LetsSingIt - Your favorite Music Community )

皆さん、大概のレコードってのは恋とか失恋とか、寂しさとかスッテンテンとかの歌を歌ってるもんだが・・・本物の苦痛をわざわざ吹き込んだレコードはなかった。総合病院でまさにその適役じゃないかって奴に、俺たちのバンドは出会ったってわけだ。題して、『便秘ブルース』

 

そう、この曲は世にも珍しい便秘の歌である。 

 

つづいてちょっとダル目のイントロに入り、ホーキンスが歌い出すかと思いきや、いきなり「ウッ、ウゥゥーン、アウゥーン」と唸り出す。トイレできばるときのあの声である。

続いて「Let It Go!  Let It Go!  Let It Go! 」とシャウト。

この文脈においてLet It Goをどう訳すかは比較的簡単である。「ウ○コ出てくれ」と祈っているのである。「(苦痛を)取り去る」とも解釈できるが、もっとストレートな訳の方がこの歌の場合相応しい。

便秘の痛みは体験者でないとわからない。出したい、でも出そうとするとものすごく痛い。恥ずかしい話だが自分もあまりの痛みに耐えかねて肛門科に何とかしてくれと電話したことがある(結局は自分で何とかするしかないという話になったが)。ここでは書けないような情けない試みもやってなんとかしようともがいた。

 

I don't believe I can take much more
Let it go
Aah
Got a pain down inside
Won't be denied
Yeah, every time I try
I can't be satisfied
Let it go!

(これ以上は我慢できねえ
もう出てくれ
ああ、腹痛え
本気で痛え
何度やっても
上手くいかねえ
ウ○コ出てくれ!)

 

曲の最後に「Splash!」という単語が飛び出す。「飛び散る」が辞書的な意味だが適訳を擬音語で書くとあまりに下品なので書かない。そして「Feel Alright!」と高らかに閉められる。あの安堵感、この気持ちもよーくわかる。

 

最近「Let It Go」というフレーズを聞く度に、この歌を思い出してしまっている。

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