トーキョーナガレモノ

日本映画の旧作の感想。でもそのうち余計なことを書き出すだろう。

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土曜は寅さん!(1)

今週のお題「秋の新番組」

 

TV東京系列のBSジャパンで「土曜は寅さん!」という新番組が始まった。

タイトル通り、1969年にはじまる「男はつらいよ」シリーズ全48作を週一本、約1年掛けて全作放送するのだという。

 

渥美清の急死で突然の終止符を迎えてから既に18年、いまだにこの作品が一定の人気を保っているのは凄いことだ。監督の山田洋次は同番組のインタビューで「ありがたいこと」と謙虚に述べている。

 

 70年代後半〜80年代の洋画ブームの中で青春期を過ごした自分にとって、日本映画のプログラムピクチャーには長く食指が動かなかった。日本映画退潮期のこの時期、プログラム・ピクチャーと呼ばれる2本立て、3本立てを前提とする作品は日活ロマンポルノと松竹の寅さんしかなかったからだ。少ない小遣い銭ではスター・ウォーズと寅さんの両方は観られない。そしてどちらを 観るかは少年にとっては自明の選択だ。その習慣は20代になり、職を得、ある程度金銭にゆとりができても引き継がれていった。

 

ある程度年齢を重ねてみると、初めて良さがわかる作品というものがある。これはノスタルジーというものだろうか? いや、その当時は作品を観ていないのだからノスタルジーというより新体験だ。ひょっとすると昭和ブームとかいうのに載せられて、知りもしないくせに「何もないけれど希望だけはあった」とか言っちゃってるあのクソみたいなスノビズムに無意識に載せられているのだろうか、自分は? そうでないことを祈りたい。

 

ただすくなくとも「男はつらいよ」はいい歳した大人がいい歳になって「ああ、いいよね」といいたくなる、そういう気分になりたいときにストンとはまる作品のように思える。食わず嫌いも一生続けるのは意外と困難なのだろう。