トーキョーナガレモノ

日本映画の旧作の感想。でもそのうち余計なことを書き出すだろう。

注意)本・DVDなどへのリンクはAmazonのアフィリンクです。ご了承下さい。過去記事一覧はこちらです。

日活

愛に濡れたわたし

港町、雷雨の夜。ずぶ濡れの京平(石津康彦)が雨宿りにバーに駆け込む場面から映画は始まる。客もなく、有線放送で森進一の「港町ブルース」が流れるだけの小さな店。カウンターには愛想のないママの美和(宮下順子)ただ一人。二人はそれがさも当然であるかの…

日活の黄金期を彩った歌声

ゆく年くる年2015「貼り付け機能でプレゼントキャンペーン」 あとで買おうと思っている商品の備忘録代わりにAmazonウィッシュリストを使っているのだが、何年もウィッシュリストに残りっぱなしのものも少なくない。 その一つがこれ。2012年に日活の創立100周…

現代娼婦考 制服の下のうずき

四方田犬彦の古い本に、若かった自分を「こんな見方もあるのか」と感心させた次のような一節がある。 自動車のフロントグラスはそれ自体が映画のスクリーンに類似している。そこではあらゆる風景が長四角の枠組に切り取られ、隔たりを設けたうえで、おそろ…

発禁本「美人乱舞」より 責める!

高校時代の倫理社会の授業は退屈で、覚えていることはほとんどないが、教科書の挿絵のニーチェの肖像画はいまも思い出すことができる。狂気の淵に沈んだ晩年の、ベッドから窓の外を眺めるかつての大哲学者の静謐な横顔をスケッチしたものであった。 「発禁本…

新橋ロマン劇場が最後の番組に選んだ作品と、その歴史

新橋のガード下で50年以上にわたり営業を続けてきたピンク映画専門館、新橋ロマン劇場が去る8月31日、隣接する新橋文化劇場とともに、一部のファンと多数の野次馬に惜しまれながら閉館した。 ロマン劇場の閉館前の最後の三日間は「日活ロマンポルノ傑作選」…

さすらいの恋人 眩暈(めまい)

挿入歌に中島みゆきの「わかれうた」が流れる恋愛映画に、ハッピーエンドは約束されていない。 にもかかわらず、「さすらいの恋人 眩暈(めまい)」(小沼勝監督・1978年日活)のなかで徹(北見敏之)と京子(小川恵)が、「わかれうた」をバックに二人だけの暮ら…

野良猫ロック 暴走集団'71

1970年頃の日本映画は西新宿の風景を使用することが多い。この頃から超高層ビルの建設計画が進められ、1971年の京王プラザホテルを皮切りに現在の西新宿につながる風景が作られてゆくが、まだロケに適した空き地が多かったのだろうか。 新宿駅西口のロータリ…

セーラー服鑑別所

Dr.スランプのアラレちゃんをマネして「キーーーン」をやりながら校門をくぐったら、学校が鑑別所になっていた。 「セーラー服鑑別所」(川崎善広監督・1982年日活)はそんな不条理なシチュエーションから幕を開ける。ミヨコ(美保純)とヨーコ(中川みず穂)の仲…

赫い髪の女

6月第2週のNHK連続テレビ小説「花子とアン」は、主人公の祖父、安東周造こと「おじぃやん」が病に倒れてから息を引き取るまでがストーリーの核に描かれていて、必然的に石橋蓮司が大きくクローズアップされる週になった。不在の父、吉平(伊原剛志)に代わって…

赤線玉の井 ぬけられます

きーんらーんどーんすの おーびしーめなーがらはなよめごりょおーは なーぜなーくのーだろー・・・*1 公子(芹明香)は二年を過ごした「小福屋」を足抜けした。小福屋は「お父さん」(殿山泰司)と「お母さん」(絵沢萠子)が切り盛りする、玉の井では珍しくない小…

狂った果実(1981)

20歳の哲夫(本間優二)は、昼はガソリンスタンド、夜は歌舞伎町のピンクサロンのボーイとして働いていた。ピンサロのマスター「アニキ」(益富信孝)はタイで活動したこともある元キックボクサーで、ホステスの春恵(永島暎子)と同棲していた。田舎の神社の息子…

蟹江敬三

3月に胃癌で亡くなった俳優・蟹江敬三のお別れの会が5月13日に都内で開かれたそうだ。 蟹江敬三さん『お別れ会』に700人参列 能年ら“あまちゃん”ファミリーも ニュース-ORICON STYLE- 蟹江敬三がいつ頃からテレビに進出したのか記憶が定かでないが、70年代は…

(秘)極楽紅弁天

(秘)極楽紅(あか)弁天(曽根中生監督・1973年日活)は人別帳にも載らない「帳外長屋」に暮らす、江戸社会の最下層の人びとのパワフルでアナーキーな生き様を描いたロマンポルノ。 長屋の同じ部屋に暮らす主人公・お紺(片桐夕子)は生娘、同居人は男好きのお品(…

昼下りの情事 変身

涼子(青山美代子)はごく普通の会社の秘書課に勤めるOLだったが、病弱な父親と幼い弟妹を養うためスナックで夜のアルバイトをしていた。会社から帰ると、またアルバイトに出かける毎日。 アルバイトに出る道すがら、商店街の花屋で花を買っていくのが涼子の日…

現代っ子

居間の鴨居に、額に入れた三枚の表彰状が掲げてある。 「行ってきまーす!」長男のやすし(鈴木やすし)が飛び出すと、真ん中の表彰状がずり落ちてしまう。表彰状を直して、やすしは学校に向かう。 「行ってきまーす!」長女のチコ(中山千夏)が次に飛び出すと…

実録阿部定

彼女のモノローグから、映画は始まる。 あたしは、自分でも数え切れないくらいたくさんの名前を使ってきました。 彼女はいちいち憶えてはいられないほど数十個の偽名を丁寧に一つ一つ挙げ、 でも吉蔵さんが死んで、やっと本当の名前、定に戻ることができたの…

白木万理

録画したまま放ってあった「必殺! THE HISSATSU」(貞永方久監督・1984年松竹)と「赤い夕陽の渡り鳥」(斎藤武市監督・1960年日活)を続けて見る。 前者はテレビ朝日系列の人気時代劇の映画化、後者は日活アクション全盛期の和製西部劇で、内容もスタッフも全く…

波止場の鷹

石原裕次郎という俳優を知ったのはテレビドラマ「太陽にほえろ!」での刑事課長=「ボス」役からで、すでにその頃の石原の顔にはふっくらとした丸みが出ていた。だから石原のずっと若い頃、「狂った果実」をはじめとする作品での、育ちの良さと精悍さの両方を…

女囚101 しゃぶる

小原宏裕監督の1977年のロマンポルノ作品。ストーリーは刑務所での日常と回想シーンが交互に展開する。(ネタバレ注意) 小さなバーのママ珠江(谷ナオミ)は、ある日、店の前の通りで怪我をした流しの歌手・ケン(村川達夫)を自室で懐抱するうちにやがて深い仲に…

美保純

NHK連続テレビ小説「あまちゃん」を見ていたとき、データ放送でキャストのプロフィルを一つ一つ観ていたら、物語の舞台である北三陸袖ヶ浜の海女のひとり、熊谷美寿々を演じる美保純のプロフィルが「映画でデビュー」としか触れられていなかったのが少し気に…