今週のお題「人生に影響を与えた1冊」 去年の夏はフィルムセンターで毎日のように増村保造のメロドラマを観ていたのに、今年の夏はほとんど映画を観ることができなかった。 きっかけはこの本だった。 プログラマのためのコードパズル ?JavaScriptで挑むコー…
「気狂いピエロ」(Pierrot le Fou, ジャン=リュック・ゴダール監督・1965年フランス)を見たという人も今ではもう少ないだろうと思うので、この作品に本人役で出演したサミュエル・フラーの有名な言葉を引用しておくのは無駄ではないだろう。 映画は戦場のよ…
加藤武が亡くなった。古い邦画のファンには残念なことだ。 俳優の加藤武さん死去 「犬神家の一族」で警察官役:朝日新聞デジタル ああ惜しい。昭和の邦画を代表する名脇役。「月曜日のユカ」の加賀まりこのパトロン、「仁義なき戦い・代理戦争」のヘタレ親分…
昔のことを蒸し返す奴はけむたがれるのが普通だ。 しかし深作欣二のいくつかの作品では、昔のことは忘れたという奴が悪役に回る。「仁義なき戦い」(1973)の終盤、広能昌三(菅原文太)が狡猾な親分山守義男(金子信雄)に絶縁を言い渡す場面。広能は山守の腰巾着…
今週のお題「ゲーム大好き」 クーロン黒沢は「電脳アジアコピー天国」(秀和システム1993年・絶版)でアジア各国のゲーム事情を面白おかしく紹介している。90年代前半のアジアのゲーム市場はアーケード用・家庭用ともに日本製品のコピーでほぼ席巻されていたと…
ラーメンにのせるチャーシューは一、二枚の方がいい。 そのほうが丼の小さな世界におけるチャーシューの希少価値を高めるし、どのタイミングで食べるかっていう作戦を立てるのも、じっくり味わうのも楽しい。一杯のラーメンにおけるチャーシューの存在意義は…
元ヤクザの親分で俳優の安藤昇のインタビュー「映画俳優安藤昇」(ワイズ出版)を読んでいたら、こんな発言があった。 大体、博打というのはスリルがあるから面白い。金は命から二番目に大切なものだろう。にもかかわらず、それをオモチャにするのだから、これ…
彼の名前を仮にN君としておこう。 1977年1月17日午後11時頃、東京大学本郷キャンパスの三四郎池の藤棚で、法学部4年生のN君は首をつった。N君のジャンパーにはレポート用紙3枚に長文の遺書が書かれており、それには次のようなことが書いてあった。 一見する…
「兄貴、3億の半分言うたらなんぼや?」「アホウ、そないなこともわからんのけ。1500万やがな」 神戸・新開地の「一度食いついたら死んでも離さない」まむしことゴロ政(菅原文太)と勝(川地民夫)のチンピラコンビが暴れ回る「まむしの兄弟」シリーズの6作目「…
港町、雷雨の夜。ずぶ濡れの京平(石津康彦)が雨宿りにバーに駆け込む場面から映画は始まる。客もなく、有線放送で森進一の「港町ブルース」が流れるだけの小さな店。カウンターには愛想のないママの美和(宮下順子)ただ一人。二人はそれがさも当然であるかの…
有閑マダムが、次々と殺される事件が起きる。被害者の共通点は、ある日マンションの一室で麻雀をしていたことだけ。麻雀仲間は五人。次の被害者が出るおそれが高い。だが警察の捜査は難航する。 新宿、とある大衆食堂。雨で客も来ない。店じまいをしかけてい…
娯楽映画にはある種のルールがあり、そのルールは観客から作品への「期待」と、作品から観客への「サービス」(それがたとえ社会規範や倫理に反するものであっても)からなる。作品が観客との間に交わしたこの約束を忠実に履行することが、先品の成功を左右…
池袋の新文芸坐で開催中の菅原文太追悼上映では、文太が1974年に吹き込んだアルバム「菅原文太 男の詩 旅立ち 放浪」が休憩時間に流れている。 菅原文太 男の詩 旅立ち 放浪 アーティスト: 菅原文太 出版社/メーカー: 徳間ジャパンコミュニケーションズ 発売…
ゆく年くる年2015「貼り付け機能でプレゼントキャンペーン」 あとで買おうと思っている商品の備忘録代わりにAmazonウィッシュリストを使っているのだが、何年もウィッシュリストに残りっぱなしのものも少なくない。 その一つがこれ。2012年に日活の創立100周…
片付けをしていたら、昔録画した「ゴルゴ13」(佐藤純彌監督・1973年東映)のDVDが出てきた。引っ越しの時に捨てたものだとばかり思っていた。 原作者のさいとう・たかをは、主人公デューク・トウゴウを高倉健をイメージしながら作ったと聞いているが、高倉…
四方田犬彦の古い本に、若かった自分を「こんな見方もあるのか」と感心させた次のような一節がある。 自動車のフロントグラスはそれ自体が映画のスクリーンに類似している。そこではあらゆる風景が長四角の枠組に切り取られ、隔たりを設けたうえで、おそろ…
12月14日の衆議院選挙の投票日を前に、維新の党の橋下徹共同代表が早くも白旗をあげたとも取れる演説をしたらしい。ブロガーのやまもといちろうは「大将は間違っても部下の背中を撃つような話をするべきじゃないと思う」とぼやいている。 橋下徹さんの「維新…
今週のお題「今年買ってよかったもの」〈2014年をふりかえる 2〉 世界で日々起こっている出来事について、各自で気になるテーマを持ち寄って少人数でざっくばらんに話し合う勉強会を職場で主催することになった。 勉強会の目的の一つが地理感覚を養うことだ…
少女には名前がない。少年には名前がない。 雑貨屋の店先の赤電話で電話帳をめくっていた少女(関根恵子)に、少年(大門正明)が背後から声をかける。 「誰にかけるんだい?俺が探してやるよ」 少女は貧しい女工からキャバレーのホステスに鞍替えして見違えるほ…
猟銃を構えた梶芽衣子の額のど真ん中に、小さな穴があく。 その穴から一筋の血がすーっと流れる。 彼女が目を見ひらいたまま崩れ落ち、バストショットのフレームの下に消えていくまでがスローモーションで捕らえる。 梶芽衣子が警察の狙撃隊に撃たれ絶命する…
トピック「ミニマリスト」について 全然違うことを考えていた。 「ミニマリスト」のトピックは今月前半にも公開しましたが、その後もさまざまな記事が書かれ、最近では「最低限の物で暮らす」という定義の「最低限」が人によって異なり、明確な定義はあるの…
とっくに放送は終わっているんだが、録画しっぱなしで半年以上見ていなかったBSジャパン「土曜は寅さん!」を数日かけて12本まとめて見た。第24作「男はつらいよ 寅次郞春の夢」(山田洋次監督・1979年松竹)から第36作「男はつらいよ 柴又より愛をこめて」(同…
「あなたは、何者なの!?」 「ぼくは、彫刻のまねごとをしている男です」 「彫刻!?」 「ぼくはめくらです。それも生まれ突き目の神経がダメで、何も見えないめくらなんです。めくらって、あわれなものだ。この世の中には目を楽しませるものがいっぱいある…
ドミニカ行きの飛行機の機内で「自分は今エボラ出血熱に感染している」と冗談を言ったアメリカ人男性が、着陸先で当局に連行されるという事件が起きた。*1 <a href="http:/…
向かいの席でタバコをふかしているこの男、吉田という名の嫌味たらしい男との偶然の再会のせいで、銀座のウィンドウショッピングは台無しになってしまった。 ——嫌な日になった。せっかくの散歩を台無しにして、思いもかけなかった不愉快な男と出会って。子供…
——以上で本件の審理を終わるが、最後に被告人は何か言うことがありますか。もし自由の身になったら、どうするかね。 ——今度こそ、幸福な結婚をしたいと思います。殺人罪の被告として、こんな辱めに遭うのも、今までの結婚が不幸だったからです。 * 彩子(若尾…
高校時代の倫理社会の授業は退屈で、覚えていることはほとんどないが、教科書の挿絵のニーチェの肖像画はいまも思い出すことができる。狂気の淵に沈んだ晩年の、ベッドから窓の外を眺めるかつての大哲学者の静謐な横顔をスケッチしたものであった。 「発禁本…
ただの脅しでないことは明らかだった。 東京行きの新幹線ひかり号のトイレから、ニトログリセリンを染み込ませた土とタイマー、それに国鉄総裁への脅迫状が発見された。脅迫状には、市街地での新幹線の減速運転、防音壁の設置、線路周辺の住宅地買い上げとい…
昭和23年11月某日、一人の殺し屋が死んだ。同じ日、マスコミに"銀座警察"と呼ばれた暴力団が公安の一斉検挙で壊滅した。 「実録・私設銀座警察」(佐藤純彌監督・1973年東映)は終戦直後の混沌の中にのし上がったならず者たちと、彼らに飼われたヒロポン中毒の…
新橋のガード下で50年以上にわたり営業を続けてきたピンク映画専門館、新橋ロマン劇場が去る8月31日、隣接する新橋文化劇場とともに、一部のファンと多数の野次馬に惜しまれながら閉館した。 ロマン劇場の閉館前の最後の三日間は「日活ロマンポルノ傑作選」…