トーキョーナガレモノ

日本映画の旧作の感想。でもそのうち余計なことを書き出すだろう。

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2014-01-01から1年間の記事一覧

ゴルゴ13

片付けをしていたら、昔録画した「ゴルゴ13」(佐藤純彌監督・1973年東映)のDVDが出てきた。引っ越しの時に捨てたものだとばかり思っていた。 原作者のさいとう・たかをは、主人公デューク・トウゴウを高倉健をイメージしながら作ったと聞いているが、高倉…

現代娼婦考 制服の下のうずき

四方田犬彦の古い本に、若かった自分を「こんな見方もあるのか」と感心させた次のような一節がある。 自動車のフロントグラスはそれ自体が映画のスクリーンに類似している。そこではあらゆる風景が長四角の枠組に切り取られ、隔たりを設けたうえで、おそろ…

あゝ決戦航空隊

12月14日の衆議院選挙の投票日を前に、維新の党の橋下徹共同代表が早くも白旗をあげたとも取れる演説をしたらしい。ブロガーのやまもといちろうは「大将は間違っても部下の背中を撃つような話をするべきじゃないと思う」とぼやいている。 橋下徹さんの「維新…

Google Earthよりリアル地球儀

今週のお題「今年買ってよかったもの」〈2014年をふりかえる 2〉 世界で日々起こっている出来事について、各自で気になるテーマを持ち寄って少人数でざっくばらんに話し合う勉強会を職場で主催することになった。 勉強会の目的の一つが地理感覚を養うことだ…

遊び

少女には名前がない。少年には名前がない。 雑貨屋の店先の赤電話で電話帳をめくっていた少女(関根恵子)に、少年(大門正明)が背後から声をかける。 「誰にかけるんだい?俺が探してやるよ」 少女は貧しい女工からキャバレーのホステスに鞍替えして見違えるほ…

ジーンズブルース 明日なき無頼派

猟銃を構えた梶芽衣子の額のど真ん中に、小さな穴があく。 その穴から一筋の血がすーっと流れる。 彼女が目を見ひらいたまま崩れ落ち、バストショットのフレームの下に消えていくまでがスローモーションで捕らえる。 梶芽衣子が警察の狙撃隊に撃たれ絶命する…

戦争の霧

トピック「ミニマリスト」について 全然違うことを考えていた。 「ミニマリスト」のトピックは今月前半にも公開しましたが、その後もさまざまな記事が書かれ、最近では「最低限の物で暮らす」という定義の「最低限」が人によって異なり、明確な定義はあるの…

寅さん漬け

とっくに放送は終わっているんだが、録画しっぱなしで半年以上見ていなかったBSジャパン「土曜は寅さん!」を数日かけて12本まとめて見た。第24作「男はつらいよ 寅次郞春の夢」(山田洋次監督・1979年松竹)から第36作「男はつらいよ 柴又より愛をこめて」(同…

盲獣

「あなたは、何者なの!?」 「ぼくは、彫刻のまねごとをしている男です」 「彫刻!?」 「ぼくはめくらです。それも生まれ突き目の神経がダメで、何も見えないめくらなんです。めくらって、あわれなものだ。この世の中には目を楽しませるものがいっぱいある…

ドミニカ行きの飛行機の機内で「自分は今エボラ出血熱に感染している」と冗談を言ったアメリカ人男性が、着陸先で当局に連行されるという事件が起きた。*1 <a href="http:/…

からみ合い

向かいの席でタバコをふかしているこの男、吉田という名の嫌味たらしい男との偶然の再会のせいで、銀座のウィンドウショッピングは台無しになってしまった。 ——嫌な日になった。せっかくの散歩を台無しにして、思いもかけなかった不愉快な男と出会って。子供…

妻は告白する

——以上で本件の審理を終わるが、最後に被告人は何か言うことがありますか。もし自由の身になったら、どうするかね。 ——今度こそ、幸福な結婚をしたいと思います。殺人罪の被告として、こんな辱めに遭うのも、今までの結婚が不幸だったからです。 * 彩子(若尾…

発禁本「美人乱舞」より 責める!

高校時代の倫理社会の授業は退屈で、覚えていることはほとんどないが、教科書の挿絵のニーチェの肖像画はいまも思い出すことができる。狂気の淵に沈んだ晩年の、ベッドから窓の外を眺めるかつての大哲学者の静謐な横顔をスケッチしたものであった。 「発禁本…

動脈列島

ただの脅しでないことは明らかだった。 東京行きの新幹線ひかり号のトイレから、ニトログリセリンを染み込ませた土とタイマー、それに国鉄総裁への脅迫状が発見された。脅迫状には、市街地での新幹線の減速運転、防音壁の設置、線路周辺の住宅地買い上げとい…

実録・私設銀座警察

昭和23年11月某日、一人の殺し屋が死んだ。同じ日、マスコミに"銀座警察"と呼ばれた暴力団が公安の一斉検挙で壊滅した。 「実録・私設銀座警察」(佐藤純彌監督・1973年東映)は終戦直後の混沌の中にのし上がったならず者たちと、彼らに飼われたヒロポン中毒の…

新橋ロマン劇場が最後の番組に選んだ作品と、その歴史

新橋のガード下で50年以上にわたり営業を続けてきたピンク映画専門館、新橋ロマン劇場が去る8月31日、隣接する新橋文化劇場とともに、一部のファンと多数の野次馬に惜しまれながら閉館した。 ロマン劇場の閉館前の最後の三日間は「日活ロマンポルノ傑作選」…

さすらいの恋人 眩暈(めまい)

挿入歌に中島みゆきの「わかれうた」が流れる恋愛映画に、ハッピーエンドは約束されていない。 にもかかわらず、「さすらいの恋人 眩暈(めまい)」(小沼勝監督・1978年日活)のなかで徹(北見敏之)と京子(小川恵)が、「わかれうた」をバックに二人だけの暮ら…

サイン本は物神化する——追悼・鈴木則文——

トピック「本好き」について 本好きへの100の質問 にひとつだけ答える。 057. サイン本を持っていますか?(タイトルと作家名は?) 数冊持っているが一冊だけ紹介しよう。 楷書のサインに、「則文」の落款。いわゆるサイン本のイメージとは少し違う高級…

野良猫ロック 暴走集団'71

1970年頃の日本映画は西新宿の風景を使用することが多い。この頃から超高層ビルの建設計画が進められ、1971年の京王プラザホテルを皮切りに現在の西新宿につながる風景が作られてゆくが、まだロケに適した空き地が多かったのだろうか。 新宿駅西口のロータリ…

くちづけ(1957)

拘置所で偶然知り合った若い男女が恋に落ちるまでの二日間。「くちづけ」(増村保造監督・1957年大映)のプロットはそれだけである。 * 選挙違反で捕まった父の面会に小菅の拘置所を訪れた大学生の欽一(川口浩)は、所内の売店で差し入れ品のお金が足りなくて困…

文系だけど宇宙の話が好きな人は野辺山の電波天文台に行ってみよう

今週のお題「海か? 山か?」 高校も大学も文系だったが、ネットのニュース記事で何万光年も彼方の銀河の画像やブラックホールのイメージ図を見かけると思わず見入ってしまう。そういう人は多いのではないかと思う。 国立天文台の各地の観測施設が年1回開催…

青空娘

溌剌としたポニーテールの若尾文子がとても可愛らしい「青空娘」(増村保造監督・1957年大映)は増村-若尾コンビの第1作。ストーリーは小公女ふうの明るい青春ものである。 * 地方の高校を卒業し、有子(若尾文子)は東京で会社を経営している父・小野栄一(新欣…

女の一生(1962)

日露の戦場・旅順の陥落を祝う提灯行列が歩く中、通りの裏のボロ家で折檻されている少女、おけい(京マチ子)がいた。母を幼くして失い、父も日清戦争でなくしたおけいは折檻の末に叔父夫婦の家を追い出され、あてどもなく彷徨ううちに、誕生会を祝う歌声に誘…

セーラー服鑑別所

Dr.スランプのアラレちゃんをマネして「キーーーン」をやりながら校門をくぐったら、学校が鑑別所になっていた。 「セーラー服鑑別所」(川崎善広監督・1982年日活)はそんな不条理なシチュエーションから幕を開ける。ミヨコ(美保純)とヨーコ(中川みず穂)の仲…

美貌に罪あり

杉村春子、山本富士子、若尾文子、野添ひとみ、勝新太郎、川崎敬三、川口浩、藤巻潤。 「美貌に罪あり」(増村保造監督・1959年大映)は没落した地主農家から自立してゆく家族の様々な生き方をオールスターで描く作品。お盆休み向けの目玉作品なので、大事なの…

北陸代理戦争

石川県の指定無形文化財に、能登半島のほぼ先端、輪島市名舟町に伝わる御陣乗太鼓という荒々しい伝統芸能がある。戦国時代、名舟に攻め寄せつつあった上杉謙信の軍勢を、木の皮と海藻でこしらえた異形の仮面とおどろおどろしい太鼓の音で脅かし、戦わずして…

赫い髪の女

6月第2週のNHK連続テレビ小説「花子とアン」は、主人公の祖父、安東周造こと「おじぃやん」が病に倒れてから息を引き取るまでがストーリーの核に描かれていて、必然的に石橋蓮司が大きくクローズアップされる週になった。不在の父、吉平(伊原剛志)に代わって…

赤線玉の井 ぬけられます

きーんらーんどーんすの おーびしーめなーがらはなよめごりょおーは なーぜなーくのーだろー・・・*1 公子(芹明香)は二年を過ごした「小福屋」を足抜けした。小福屋は「お父さん」(殿山泰司)と「お母さん」(絵沢萠子)が切り盛りする、玉の井では珍しくない小…

Let It Goの意味の広さ

トピック「レリゴー」 ディズニーのアニメーション映画「アナと雪の女王」が大ヒットして、挿入歌「Let It Go」がYouTubeで大流行しているそうだ。映画は見ていないが、同曲の動画はYouTubeで英語版、日本語版ともに見させてもらった。どちらも自己肯定感に…

狂った果実(1981)

20歳の哲夫(本間優二)は、昼はガソリンスタンド、夜は歌舞伎町のピンクサロンのボーイとして働いていた。ピンサロのマスター「アニキ」(益富信孝)はタイで活動したこともある元キックボクサーで、ホステスの春恵(永島暎子)と同棲していた。田舎の神社の息子…