トーキョーナガレモノ

日本映画の旧作の感想。でもそのうち余計なことを書き出すだろう。

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2014-01-01から1年間の記事一覧

激突!合気道

時代は大正の初め。和歌山の旧家に生まれ厳格な父に起倒流柔術を仕込まれた植芝盛平(千葉治郎)は弟子を率いて北海道開拓に赴く。 ある日植芝は北海組の飯場から脱走してきた少年をかくまったことがきっかけで一悶着になるが、北海組の雇われ用心棒で名取流空…

はい、菊池です

5月17日に流れた、二つの芸能ニュース。 マッカートニーさん 体調崩し公演延期 (NHK) 歌手のASKA容疑者を逮捕 覚醒剤所持 容疑を否認 (NHK) これ見て「はい、ポールマッカートニー取り調べ係の菊池です」という伊武雅刀の声が脳内再生された人は間違いな…

喜劇 特出しヒモ天国 (その2)

(承前) ター坊(下條アトム)は、A級京都に出前を届ける聾唖者の青年であった。まだ少年の面影を残すター坊には、しかし、やはり聾唖者の妻かおる(森崎由紀)がいた。 ある日ター坊はかおると共にA級京都で働かせて欲しいと昭平(山城新伍)に頼み込む。やむなく…

喜劇 特出しヒモ天国 (その1)

一が顔で二が持ち物(イチモツ)、三、四がなくて五が親切ーー。 これがストリッパー(業界用語で「タレント」)のヒモ(業界用語で「マネージャー」)稼業で生きていくコツだと、主人公・昭平は(山城新伍)はヒモ仲間から教えられる。女に寄生するヒモには、ルック…

蟹江敬三

3月に胃癌で亡くなった俳優・蟹江敬三のお別れの会が5月13日に都内で開かれたそうだ。 蟹江敬三さん『お別れ会』に700人参列 能年ら“あまちゃん”ファミリーも ニュース-ORICON STYLE- 蟹江敬三がいつ頃からテレビに進出したのか記憶が定かでないが、70年代は…

(秘)極楽紅弁天

(秘)極楽紅(あか)弁天(曽根中生監督・1973年日活)は人別帳にも載らない「帳外長屋」に暮らす、江戸社会の最下層の人びとのパワフルでアナーキーな生き様を描いたロマンポルノ。 長屋の同じ部屋に暮らす主人公・お紺(片桐夕子)は生娘、同居人は男好きのお品(…

幻の馬

馬を一頭しか飼っていない北国の貧しい牧場で、その子馬は夜明けと共に生まれた。 子馬に「タケル」と名づけた牧場の少年、次郎(岩垂幸彦)はタケルをこの上なくかわいがり、ハーモニカを吹いて歌を歌ってやる。タケルが腸の捻れで病んだときは寝ずに一晩中看…

iOS7.1で復活したカレンダーの「閲覧モード」から新規予定を追加するには

今さらな話だが、先日iPhoneのOSをiOS7.1にバージョンアップした。 iOS7.1では標準アプリの「カレンダー」が若干改良されて、月表示に「閲覧モード」が追加された。 カレンダーの月表示の「閲覧モード」ボタンをタップすると・・・ 閲覧モードに切り替わり、…

蟹工船

2008年に「蟹工船ブーム」というものがあった。この年はプロレタリアート作家・小林多喜二が獄中死してから75年の節目に当たり、小林を巡るシンポジウムや感想文コンクールが開かれたのだが、格差社会の中、明るい将来像を描けない若年層の仕事を巡る漠然と…

【書評】世直しとしての地震 — アウエハント『鯰絵』

1855(安政2)年旧暦10月2日夜10時頃、江戸を推定マグニチュード6.3の大地震が襲った。被災者の正確な統計はないものの、死者数千人、家屋倒壊1万数千軒、各地で火災が発生したと推定される。後代、安政大地震と呼ばれる地震である。 地震から数日も経たないう…

メカゴジラの逆襲

本多猪四郎は1993年に81歳で他界するが、監督作品としては「メカゴジラの逆襲」(1975年東宝)が最後となり、結果的にこの作品が本多の遺作となった。また東宝は、本作の興行的な失敗のため「ゴジラ」(1954年東宝)以来20年を経過しマンネリ化していた怪獣映画…

「フクシマ」後のゴジラ

東京・神保町の神保町シアターでゴジラ誕生60周年と新作映画の公開を記念して「ゴジラ映画総進撃」特集を開催している。第1作「ゴジラ」(本多猪四郎監督・1954年東宝)から「ゴジラFINAL WARS」(北村龍平監督・2004年東宝)まで全28本を連続して上映している。…

昼下りの情事 変身

涼子(青山美代子)はごく普通の会社の秘書課に勤めるOLだったが、病弱な父親と幼い弟妹を養うためスナックで夜のアルバイトをしていた。会社から帰ると、またアルバイトに出かける毎日。 アルバイトに出る道すがら、商店街の花屋で花を買っていくのが涼子の日…

現代っ子

居間の鴨居に、額に入れた三枚の表彰状が掲げてある。 「行ってきまーす!」長男のやすし(鈴木やすし)が飛び出すと、真ん中の表彰状がずり落ちてしまう。表彰状を直して、やすしは学校に向かう。 「行ってきまーす!」長女のチコ(中山千夏)が次に飛び出すと…

実録阿部定

彼女のモノローグから、映画は始まる。 あたしは、自分でも数え切れないくらいたくさんの名前を使ってきました。 彼女はいちいち憶えてはいられないほど数十個の偽名を丁寧に一つ一つ挙げ、 でも吉蔵さんが死んで、やっと本当の名前、定に戻ることができたの…

土曜は寅さん!(8): 男はつらいよ 寅次郎純情詩集

ヒロインが不治の病で死ぬというストーリーは喜劇にはあまりないと思うが、「男はつらいよ」シリーズ第18作「男はつらいよ 寅次郎純情詩集」(山田洋次監督・1976年松竹)ではマドンナ、柳生綾(京マチ子)の死によって寅次郞の恋が唐突に終わりを告げる異色の展…

CM入れすぎ「午後ロード」は本編をどれくらいカットするか

テレビ東京で平日の午後1時半から放送している2時間枠の「午後のロードショー」、通称「午後ロード」または「午後ロー」。 仕事があるので普段は見られないし、録画してまで見たいと思うようなラインナップでもない上に、下に書くような理由で積極的に観る気…

デルス・ウザーラ

1902年夏、数名の部下を率いて沿海州を踏査していたロシア帝国の探検家アルセーニエフ(ユーリー・サローミン)は、森の中でアジア系の年老いた猟師デルス・ウザーラ(マキシム・ムンズク)と出会う。 年齢は「わからない」という。ずっと昔に家族を疫病で失って…

独立機関銃隊未だ射撃中

戦争映画で密室劇というと、ドイツ映画「U・ボート」(ヴォルフガング・ペーターゼン監督、1981年)のような潜水艦ものがまず思い浮かぶ。潜水艦の搭乗員は、攻撃してくる敵の姿を目で見ることはできない。自艦が敵の水雷で次第に追い詰められていく恐怖は、爆…

土曜は寅さん!(7): 男はつらいよ 寅次郎夕焼け小焼け

2020年夏季オリンピックの東京招致の決め手になったのが、滝川クリステルのプレゼンテーションで披露した「おもてなし」という言葉。2013年の流行語にもなったが、もてなすことの本質とは何だろうか。 男はつらいよシリーズ第17作「男はつらいよ 寅次郎夕焼…

銀界

久しぶりに山本邦山+菊地雅章「銀界」(1974)を聞く。 邦山のアルバムで聞いたことがあるのはこれだけなので、邦山の音楽性についてとやかく言う資格は自分にはない。 銀界 アーティスト: 山本邦山+菊地雅章,山本邦山,菊地雅章,ゲイリー・ピーコック,村上寛 …

時代劇脳

佐村河内守(さむらごうち・まもる)という名前を何度見ても「さむら・かわちのかみ」と読んでしまい、本名は家光とか信綱とか篤胤とかその手の名前だろうかと想像してしまう自分は時代劇脳になっているんだろうか。このところ立て続けに眠狂四郎シリーズと…

新選組始末記

浪人、山崎蒸(市川雷蔵)は偶然出会った新選組の近藤勇(若山富三郎)の人柄に惚れ込み、山崎の兼ねてからの願いであった武士らしく死ぬ場所を求めて新選組に入隊する。 新選組は隊規を破った者に切腹という厳しい罰則を掲げていたが、素行の悪い局長芹沢鴨(田…

税金の無駄遣いじゃの

選挙が告示される数日前から、自宅から駅に向かう途中の道ばたに候補者ポスターの掲示板が立つ。高さ1.5メートル、幅3メートルくらいだろうか。白塗りの板に、各候補者のポスターの貼付場所を示す緑のマスが引いてある。告示されてから投票日までの間に、掲…

小野田寛郎という現象

小野田寛郎氏が亡くなった。ご冥福を祈ります。 訃報:小野田寛郎さん91歳=戦後も比の山中に29年 - 毎日新聞 東京新聞:小野田寛郎さん死去 孤独耐え30年 最後の帰還兵:社会(TOKYO Web) 小野田氏は旧日本陸軍の諜報員の養成機関として有名な陸軍中野学…

吹けば飛ぶよな男だが

「「空気」の研究」などの日本人論で知られる評論家・山本七平に、こんな文章がある。これは山本の死後刊行されたエッセイ集「静かなる細き声」(1992)からのもの。 近頃はほとんど耳にしなくなったが、私が子供のころには「ヤソ」と言う一種独特の語感がする…