トーキョーナガレモノ

日本映画の旧作の感想。でもそのうち余計なことを書き出すだろう。

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女囚101 しゃぶる

小原宏裕監督の1977年のロマンポルノ作品。ストーリーは刑務所での日常と回想シーンが交互に展開する。(ネタバレ注意) 

 


小さなバーのママ珠江(谷ナオミ)は、ある日、店の前の通りで怪我をした流しの歌手・ケン(村川達夫)を自室で懐抱するうちにやがて深い仲になる。風俗嬢あがりで不妊手術まで受けさせられている自分に対して、プロデビューという夢をもつ若いケンに尽くす珠江。だが、ケンの自主製作レコードを作ってやると近づいたかつての情夫に全財産を騙し取られてしまう。口論しているうちにレイプされそうになった珠江は、思わず情夫を撲殺し懲役刑を受ける。

 

無力感の中の刑務所暮らし。ある日、新入りの房仲間が口ずさんだ鼻歌が珠江を驚かせる。それはかつてケンが作って珠江に聞かせた歌だったからだ。やがてケンがデビューを果たしたことを珠江は娯楽室のテレビで知る。ケンへの思いに火をつけられた珠恵は、野外作業の隙を見て、同房の女と脱走に成功する。「網走番外地」よろしく、手錠でつながれたまま。

 

忍び込んだ町工場で手錠の鎖だけは切れたものの、手枷は取れない。左手をバッグで隠しながらついにケンとの再会を果たす珠江。しかしケンは、珠江との愛を確かめる振りをしながら、ベッドの上でその首を絞めてしまう。今や全国を飛び回る売れっ子、社長令嬢との婚約も決まり順風満帆のケンには、脱獄囚の女との過去などスキャンダルでしかないのだ。

 

珠江の死体を自分の赤いポンティアックのトランクに隠し、ケンは歌番組のリハーサルに臨む。そこに現れた婚約者の社長令嬢が、ちょっと買い物に行くからとマネージャーからケンのポンティアックの鍵を借りる。通りを走り抜ける赤い車。そのトランクからは、手錠をはめた女の左手がはみ出していた・・・


  

これは当時大きな騒ぎになった克美しげる(Wikipedia)の事件と絡ませた女囚もの。現役の歌手が人を殺したのは前代未聞だった。この作品をラピュタ阿佐ヶ谷のレイトショーで見たのは10月下旬だが、克美が今年はじめに亡くなっていたことが10月2日付の芸能ニュースで流れていたことを後で知った。奇妙な偶然である。

 

克美しげるさん、亡くなっていた 殺人、覚醒剤…人気歌手から転落人生 - 芸能 - ZAKZAK

 

それにしてもこの映画のラストシーン、走り去るポンティアックのえんじ色と、トランクからはみ出た珠江のドレスの袖の青色とのコントラストが生々しく、強い印象を残す。スキャンダラスな内容にもかかわらず哀切感の漂う作品。