トーキョーナガレモノ

日本映画の旧作の感想。でもそのうち余計なことを書き出すだろう。

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戦争の霧

トピック「ミニマリスト」について

全然違うことを考えていた。

ミニマリスト」のトピックは今月前半にも公開しましたが、その後もさまざまな記事が書かれ、最近では「最低限の物で暮らす」という定義の「最低限」が人によって異なり、明確な定義はあるの? と話題になっているようです。皆さんが考える「ミニマリスト」とはどういったものでしょう?

ミニマリストというと、美術のフランク・ステラとか音楽のスティーブ・ライヒのことだと思っていたが、最近は「最低限の物で暮らす人」という意味で使われるのか。断捨離とかシンプルライフの謂だろうか。

 

まあついでだからこの方面の話を続ける。

ミニマルミュージックの作曲家にフィリップ・グラス(Philip Glass)という人がいる。グラスは映画音楽のスコアも多く書いているのだが、あいにく観ているものは一本しかない。「フォッグ・オブ・ウォー マクナマラ元米国防長官の告白」(エロール・モリス監督・2003年アメリカ)がそれだ。

 

この映画、現在はYouTubeで全編視聴可能だ。日本語字幕がないのがつらいが、冒頭の数分間を見てみると良い。タイトル曲"100,000 People"のシンプルで美しい調べを背景に、北ベトナムを警戒しながら南シナ海を哨戒するアメリカ海軍軍艦の水兵の淡々とした作業風景が映し出される*1

 

ロバート・マクナマラ(1916−2009)は空軍を経てフォード・モーターの社長を務めた後ケネディに国防長官として抜擢され、ケネディ、ジョンソン両大統領期の国防長官(1961-68)としてキューバ危機とアメリカのベトナム戦争への介入に深く関与した。アメリカの戦争の中心にいた人物である。

アメリカがアフガニスタンタリバンと戦っていた頃、85歳のマクナマラの証言と当時の資料映像とで構成し戦争の60年代を再考したドキュメンタリーが「フォッグ・オブ・ウォー」である。マクナマラは言う。"Cold war?  It was a hot war."

 

戦争の映像とミニマル調の音楽は一見ミスマッチに思えるかも知れない。が、グラスの曲は不思議なほど映像に合っている。その旋律は間もなく訪れるベトナムの泥沼の予感させる不安をかすかにはらんでいる。


The Fog of War - Eleven Lessons from the Life of ...

 

この映画を見た後、サウンドトラックをiTunes Storeから購入した。"100,000 People"を時々思い出したように聞いている。

Philip Glass: The Fog of War (Soundtrack from the Motion Picture)

Philip Glass: The Fog of War (Soundtrack from the Motion Picture)

  • John Kusiak & Michael Riesman
  • Soundtrack
  • USD 11.99

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*1:この風景はトンキン湾事件を経て本格的な交戦へと連なってゆく伏線として用いられている