トーキョーナガレモノ

日本映画の旧作の感想。でもそのうち余計なことを書き出すだろう。

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CM入れすぎ「午後ロード」は本編をどれくらいカットするか

テレビ東京で平日の午後1時半から放送している2時間枠の「午後のロードショー」、通称「午後ロード」または「午後ロー」。 仕事があるので普段は見られないし、録画してまで見たいと思うようなラインナップでもない上に、下に書くような理由で積極的に観る気…

デルス・ウザーラ

1902年夏、数名の部下を率いて沿海州を踏査していたロシア帝国の探検家アルセーニエフ(ユーリー・サローミン)は、森の中でアジア系の年老いた猟師デルス・ウザーラ(マキシム・ムンズク)と出会う。 年齢は「わからない」という。ずっと昔に家族を疫病で失って…

独立機関銃隊未だ射撃中

戦争映画で密室劇というと、ドイツ映画「U・ボート」(ヴォルフガング・ペーターゼン監督、1981年)のような潜水艦ものがまず思い浮かぶ。潜水艦の搭乗員は、攻撃してくる敵の姿を目で見ることはできない。自艦が敵の水雷で次第に追い詰められていく恐怖は、爆…

土曜は寅さん!(7): 男はつらいよ 寅次郎夕焼け小焼け

2020年夏季オリンピックの東京招致の決め手になったのが、滝川クリステルのプレゼンテーションで披露した「おもてなし」という言葉。2013年の流行語にもなったが、もてなすことの本質とは何だろうか。 男はつらいよシリーズ第17作「男はつらいよ 寅次郎夕焼…

銀界

久しぶりに山本邦山+菊地雅章「銀界」(1974)を聞く。 邦山のアルバムで聞いたことがあるのはこれだけなので、邦山の音楽性についてとやかく言う資格は自分にはない。 銀界 アーティスト: 山本邦山+菊地雅章,山本邦山,菊地雅章,ゲイリー・ピーコック,村上寛 …

時代劇脳

佐村河内守(さむらごうち・まもる)という名前を何度見ても「さむら・かわちのかみ」と読んでしまい、本名は家光とか信綱とか篤胤とかその手の名前だろうかと想像してしまう自分は時代劇脳になっているんだろうか。このところ立て続けに眠狂四郎シリーズと…

新選組始末記

浪人、山崎蒸(市川雷蔵)は偶然出会った新選組の近藤勇(若山富三郎)の人柄に惚れ込み、山崎の兼ねてからの願いであった武士らしく死ぬ場所を求めて新選組に入隊する。 新選組は隊規を破った者に切腹という厳しい罰則を掲げていたが、素行の悪い局長芹沢鴨(田…

税金の無駄遣いじゃの

選挙が告示される数日前から、自宅から駅に向かう途中の道ばたに候補者ポスターの掲示板が立つ。高さ1.5メートル、幅3メートルくらいだろうか。白塗りの板に、各候補者のポスターの貼付場所を示す緑のマスが引いてある。告示されてから投票日までの間に、掲…

小野田寛郎という現象

小野田寛郎氏が亡くなった。ご冥福を祈ります。 訃報:小野田寛郎さん91歳=戦後も比の山中に29年 - 毎日新聞 東京新聞:小野田寛郎さん死去 孤独耐え30年 最後の帰還兵:社会(TOKYO Web) 小野田氏は旧日本陸軍の諜報員の養成機関として有名な陸軍中野学…

吹けば飛ぶよな男だが

「「空気」の研究」などの日本人論で知られる評論家・山本七平に、こんな文章がある。これは山本の死後刊行されたエッセイ集「静かなる細き声」(1992)からのもの。 近頃はほとんど耳にしなくなったが、私が子供のころには「ヤソ」と言う一種独特の語感がする…

「左翼にあらずんば映画人にあらず」発言の背景

東京に住んでいるのでよく知らないが、自治体主催で長年開催されていた京都映画祭が、吉本興業のバックアップで「京都国際映画祭」と名を改めて2014年に開催されるそうだ。その準備委員会での俳優・津川雅彦のスピーチが話題になっていることを下記のブログ…

必殺!III 裏か表か

幕府と両替商組合の深い癒着に首を突っ込んだために、自分が属する南町奉行所から命を狙われる同心・中村主水(藤田まこと)の死闘を描く「必殺!III 裏か表か」(工藤栄一監督・1986年松竹)。 通常、「必殺仕事人」シリーズは闇の中の暗殺場面が見せ所だが、こ…

愛の讃歌

来年1月22日まで東京国立近代美術館フィルムセンター(NFC)で山田洋次監督の特集上映が開催されており、「男はつらいよ」シリーズのうち20作を含む54作品がラインナップされている。浅草名画座*1なき今となっては寅さんをスクリーンで見る貴重な機会になって…

女囚さそり けもの部屋

「女囚さそり けもの部屋」(伊藤俊也監督・1973年東映)は「さそり」の異名をもつ凄腕の殺人犯・松島ナミ(梶芽衣子)の逃亡劇を描くシリーズの3作目。「女囚さそり 第41雑居房」で脱走に成功したナミは警察に追われる身に。猟犬の如くナミを追う隻腕の刑事・権…

土曜は寅さん!(6): 男はつらいよ 純情篇(その2)

(承前) 夕子(若尾文子)はとらやまで迎えに来た夫と共に出直すことを決意し、柴又を去って行く。寅次郎もまた、振られたその日のうちに柴又駅のプラットホームに立つ。見送りきたさくらと、ベンチで電車を待っている。 さくら ねえお兄ちゃん、もうお正月も近…

土曜は寅さん!(6): 男はつらいよ 純情篇(その1)

寅次郎にはまわりくどい言い回しが通用しない。言葉を言葉通りに受け取る人である。 今ならちょっとお医者さんに診てもらいましょうということになるのかもしれないが、「男はつらいよ」の世界ではとらやのおいちゃん(森川信)の口癖「バカだねあいつは」で済…

土曜は寅さん!(5): 男はつらいよ 奮闘篇

春。まだ雪残る新潟の山間部・越後広瀬駅の待合室から「男はつらいよ」シリーズ第7作「男はつらいよ 奮闘篇」(山田洋次監督・1971年松竹)は始まる。 待合室では就職のため上京してゆく学生服姿の少年少女たちと、その母親たちがストーブの暖を取っている。そ…

サイドバーで投稿日時を指定しても即座に記事が公開される件

はてなブログの編集サイドバーで「編集オプション」をクリックすると、 投稿日時という項目がある。「記事の日時を編集できます。」という説明も用意されている。 なので、ここに記事を日付と時刻を入力して「公開する」をクリックする。だが記事は指定日時…

iPhoneのPassbookで飛行機に乗る

先週、所用で広島に行ってきた際、ANAの飛行機の搭乗手続にiPhoneのPassbookを利用したので、その際のメモを記録しておこう。今ひとつ利用機会が少ないPassbookの使い方の参考にしていただければ幸いだ。iOS7にアップグレードしたiPhone4を使用した。 Passbo…

黒蜥蜴

マイベストソング2013〈今年の1曲でiTunes Cardを当てよう! 私のマイベストソング2013♪〉 映画「黒蜥蜴」/ "Black Lizard" - 丸山(美輪)明宏 明智小五郎 OP/ED ... 今年(2013年)の始めごろ、池袋の新文芸坐が深作欣二監督の没後10年を記念して、深作作品を…

女囚さそり 第41雑居房

「女囚さそり 第41雑居房」(伊藤俊也監督・1972年東映)は「女囚701号 さそり」のヒットを受けて作られたシリーズ第二作。 「女囚さそり」4部作は女優梶芽衣子のイメージを決定づけたシリーズでもあり、同年に結婚引退した「緋牡丹お竜」こと藤純子に代わる新…

白木万理

録画したまま放ってあった「必殺! THE HISSATSU」(貞永方久監督・1984年松竹)と「赤い夕陽の渡り鳥」(斎藤武市監督・1960年日活)を続けて見る。 前者はテレビ朝日系列の人気時代劇の映画化、後者は日活アクション全盛期の和製西部劇で、内容もスタッフも全く…

土曜は寅さん!(4)

「男はつらいよ」シリーズ第5作「男はつらいよ 望郷篇」1970〔昭和45〕年。 むかし世話になった政吉親分が危篤だと聞きつけ、すぐにも札幌の政吉の許へと駆けつけようとする寅次郎だが、先立つ旅費がない。金を借りようにもとらやのおいちゃんは雲隠れ、帝釈…

連想読書

勤労感謝の日の先週末から週明けにかけて、5冊ばかり本を読んで過ごした。 会計用語でいうところの「後入れ先出し法」ーーつまりいちばん最近買ったものから読み始めるーーで本を読むクセが自分にはあって、買ったはいいがつい読み始めるチャンスを失したた…

良いことを毎日3つ書くと幸せになれるか?

RIETI - 良いことを毎日3つ書くと幸せになれるか? ペンシルバニア大学のセリグマン教授らが提唱したポジティブ心理学において、人々がどうしたらもっと幸せになれるかの研究が行われている。セリグマンらの研究では、毎晩寝る前に良いことを3つ書くことを1…

東野英治郎

東野英治郎の話をもう少し。 先日逝去した作家・山崎豊子の生涯を取り上げた2013年11月19日のNHKクローズアップ現代では、「『大地の子』で国民的作家の地位を不動のものにした山崎さん・・・」というナレーションが入っていた。「大地の子」を映像化したNHK…

土曜は寅さん!(3)

シリーズ2作目「続・男はつらいよ」(1969(昭和43))に、寅次郎のかつての恩師、坪内散歩(東野英治郎)という人物が登場する。かつて悪童寅次郎にゲンコツを食らわせた坪内先生は、いまは隠居して自宅で英語塾を開いているという役どころ。 坪内先生を演じる東…

大阪ど根性物語 どえらい奴

きのう、なぜ日本の起業家の生涯は映画にならないのかというエントリを書いた後で思い出したことがあった。 起業家の映画がポピュラーにならないのは、おそらく、事業を興して財をなす人が尊敬の対象にならない風土があるからだが、例外もある。浪速の商人(…

なぜ日本の起業家の生涯は映画にならないのか

三菱村といわれる、東京丸の内の一角を用事で歩いて一休みしていたとき、ふと思った。 「これだけ立派な企業王国を作り上げた人物なのに、なぜ自分は岩崎弥太郎の生涯を知らないのだろうか?」 岩崎弥太郎を知らないのは、単純に岩崎の生涯を描いた映画を見…

波止場の鷹

石原裕次郎という俳優を知ったのはテレビドラマ「太陽にほえろ!」での刑事課長=「ボス」役からで、すでにその頃の石原の顔にはふっくらとした丸みが出ていた。だから石原のずっと若い頃、「狂った果実」をはじめとする作品での、育ちの良さと精悍さの両方を…