トーキョーナガレモノ

日本映画の旧作の感想。でもそのうち余計なことを書き出すだろう。

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東野英治郎

東野英治郎の話をもう少し。

 

先日逝去した作家・山崎豊子の生涯を取り上げた2013年11月19日のNHKクローズアップ現代では、「『大地の子』で国民的作家の地位を不動のものにした山崎さん・・・」というナレーションが入っていた。「大地の子」を映像化したNHK的には、そうだろう。

 

山崎豊子といえば「白い巨塔」という人も多いと思う。Wikipediaによると日本と韓国で5回もドラマ化されているそうだが、1978年のフジテレビ版がもっとも有名だろう。主演の田宮二郎はドラマ終了後に猟銃自殺したため、田宮の遺作にしてライフワークと化した点も大きい。

 

田宮は1967年の大映による映画版「白い巨塔」(山本薩夫監督)でも主役の財前五郎を演じており、数年前に見たことがあるのだが、ここで退官後も影響力を保ちたい医学部教授・東として登場するのが東野英治郎。ここでは老いてなお(いやだからこそ)ドロドロの権力闘争に身を置く男を演じる。

 

東野の出演作品はいくつも見ているはずだが、この「白い巨塔」での東野は強く記憶に残っている。彼はおそらく「権威」に関連づけられた役を演じたときに輝くのだろう。土曜は寅さん!(3) で触れた「続・男はつらいよ」の坪内は中年になった寅次郎にとって未だに良き教師であり、「秋刀魚の味」のヒョウタンは教師からラーメン屋に転じて笠智衆を失望させる。晩年長く演じた、悪代官を将軍家の権威で懲らしめる旅の老人が最高のハマリ役になったのは言うに及ばない。

 

話をドラマ版「白い巨塔」に戻すと、このドラマのプロデューサーは小林俊一、シリーズ4作目「新・男はつらいよ」の監督である。「白い巨塔」と「男はつらいよ」は、ともに小林俊一という結節点でつながっている。